ちょっと前の話ですが、先週の木曜日(9月27日)、ジプシー・ヴァイオリンの第一人者、古舘由佳子さんのライブを聴きに行きました。ジプシー・ヴァイオリンって何?という方もおられるでしょうが、文字通りジプシー音楽のヴァイオリンです。本当は、ヨーロッパ民族音楽の世界では(アメリカのカントリー・ミュージックでも)ヴァイオリンと言わずにフィドルと言いますが、ジプシー・フィドルと言うと、日本では更になんのこと?と言われるでしょうから、ヴァイオリンと言っているのでしょう。
ちなみに、日本でも森繁久彌さんの主演で評判となったミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の原題は「Fiddler On The Roof」です。
「屋根の上のバイオリン弾き」の舞台はユダヤ人の村でしたが、故郷を持たない流浪の民であるジプシー(最近はロマと言うそうですが)は、様々な民族の集まり(混血)と言ってもいいでしょう。1000年以上前から、インドからヨーロッパまで、その足跡は東アジアを除くほぼユーラシア大陸全土に広がっています。そしてその音楽は各地の民族音楽のみならずクラシックの世界まで、大きな影響を与えています。ジプシーは南米にはいませんが、ジプシー音楽の影響は、アルゼンチン・タンゴにもはっきりと残っていますし、あのピアソラにも影響を与えています。
ヨーロッパでは大きな影響どころか、はっきり言って現在のポピュラー・ミュージックの源流をたどれば、ジプシー音楽に行き着くと私は思っています。
クラシックの世界では、リストの「ハンガリアン・ラプソディー」、ブラームスの「ハンガリアン・ダンス」が、ジプシー音楽を取り入れた代表曲でしょう。どちらもハンガリーの名前が付いている通り、ハンガリーこそジプシー音楽の中心地です。
古舘由佳子さんは、桐朋学園出身のヴァイオリニストでオケなどで演奏していましたが、偶然聞いたジプシー・ヴァイオリンに衝撃を受けて、ハンガリーに渡って勉強され、現在ハンガリーと日本で活躍しているフィドルの第一人者なのです。「日本における」とか「日本人の」というような形容詞は付きません。強いて付ければ、「本場ハンガリーで活躍する」ジプシー・フィドルの第一人者なのです。
僕は何度か、小さなライブハウスで、喜多三のCDでお世話になったギタリストの達川さんと一緒にコラボしている古舘さんの演奏を聴きましたが、世界的フィドラーのライブに、ごくわずかの聴衆しかいないのが何とも残念でした。
そんな折、原宿のラドンナで、今回はハンガリーで一緒に演奏活動をしているピアニストとチェリストが来日してのライブがあるというので行ってきました。会場は満員というわけではありませんが、集まったお客様は皆、古舘さんの演奏を堪能しました。もっともっと聴きたいと思ったライブでした。
父もジプシー音楽など民族音楽が大好きで、レコードも沢山収集していましたが、日本人が好きな音楽、とも言えるでしょう。
当日演奏した曲目は、全部は覚えていませんが、覚えているのは、「チゴイネルワイゼン」、ブラームスの「ハンガリアン・ダンス」、ピアソラの「リベルタンゴ」、ユダヤ民謡の「ハヴァ・ナギラ」。
この曲目を見れば、ジプシー音楽のおよその雰囲気は分かるかと思います。みな短音階で、それでいてリズミカルで楽しくなるような音楽です。
皆さんも是非機会があったらジプシー音楽、そして古舘由佳子さんのフィドルを聴いて下さい、CDも沢山でています。
最後にヴァイオリンとフィドルの違いについて、ネットで面白い記事を見つけましたので、以下にご紹介します。
念の為に敢えて記しますが、以下のフィドラー像は一般的な印象であり、(良く知らないから分からないけど)、古舘由佳子さんには当てはまらないのが殆どだと思います。
・ ヴァイオリンは歌う
・ フィドルは踊る
・ ヴァイオリニストはビブラートで音程をごまかす
・ フィドラーはもともとの始めから音程が狂っている
・ 表板が光ってきれいなのがヴァイオリン
・ 松脂の粉が山のようになっているのがフィドル
・ 楽譜通りに正しく弾いても音楽にならないのがヴァイオリン
・ 楽譜を無視して弾いても音楽になるのがフィドル
・ ヴァイオリンは練習したら弾けるようになる
・ フィドルは練習しても思うほど弾けるようにならない
・ 下手なヴァイオリニストは納得される
・ 下手なフィドラーは袋叩きにされる
・ ヴァイオリニストはそっと音を出す
・ フィドラーはいきなり突拍子もない音を出す
・ ヴァイオリンの上手な人は正しい運指をマスターしている
・ フィドルが上手な人は無茶苦茶の運指で正しく弾ける
・ ヴァイオリニストは演奏会が終わってから酒を飲む
・ フィドラーは演奏前、演奏中、演奏後に酒を飲む
・ ヴァイオリニストはとりあえず向上しようとする
・ フィドラーは、酒の量に比例して向上する
・ ヴァイオリニストは自分の演奏の不出来を楽器のせいにする
・ フィドラーは楽器のせいにできるほどいい楽器を持っていない
・ ヴァイオリンの音は神経にさわり、頭痛を起こす
・ フィドルの音は癪にさわり、物を投げたくなる
・ ヴァイオリニストは楽譜がないと困る
・ フィドラーは楽譜があると困る
・ ヴァイオリニストは演奏中、自己陶酔している
・ フィドラーは演奏中、酒に酔っている
・ ヴァイオリニストは練習を欠かさない
・ フィドラーは酒を欠かさない
・ ヴァイオリニストは演奏家である
・ フィドラーは作曲家である
・ ヴァイオリニストは楽屋で今日弾く曲を練習している
・ フィドラーは楽屋でみんなと遊んでいる
・ ヴァイオリニストは車を道の真ん中で停める
・ フィドラーは他の車にぶつけてから停まる
・ ヴァイオリニストはヴァイオリンの他はよくわからない
・ フィドラーはフィドルのこともよくわからない
(九代目)